2022.3.29【小説的思考塾vol.7メモ】その7 回想について

ハイデガーは、回想とは、一般に言われているような、「過去の事象が、ありありと目の前に蘇る」だけでは弱いと言う。
過去の事象は、(対象として)こちらが思いを向けるのでなく、(対象の枠を超えて)こちらへと向かってくる。
そして、現在に静止するのでなく、彼方へと身を躍らせ、突如、未来の中に立っている。
想起された過去の事象は、今なお充足されていず、その意味で未来なのであり、未発掘の宝である。

(『存在と時間』では、〈過去→既在〉〈未来→将来〉と言い換えているが、他の本では、ふつうに〈過去〉〈未来〉と書いている)

ベルグソンは「過去は現在と並行して在り続ける」と言った。
ハイデガーは「過去は突如、未来に立って待ち受ける」と言った。