2022.3.25【小説的思考塾vol.7メモ】その5 世界と大地

〈存在〉は、「××である」という名詞的なもの(静止状態)ではなく、大地と世界の抗争状態を意味する。
ここで、ギリシア悲劇を思い浮かべながら、〈大地=運命〉〈世界=人間の営み〉と読み換えると少し感触が掴めるのでは。

『芸術作品の根源』p.73

世界とは、歴史的な民族の命運となるような単純にして本質的な諸決定の広い軌道の、それ自体を開けている開けである。大地とは、つねに自己閉鎖し、そのようにして保蔵するものが、何ものにもせき立てられずに現れてくることである。
世界と大地は、本質的にたがいに異なるものであるが、しかし両者はけっして切り離されてはいない。世界は大地の上にそれ自体を基づけ、大地は世界中いたるところに突出する。
しかし、世界と大地の間の関係は、けっしてたがいにまったく関わりをもたない対置されたものという空虚な統一に萎縮することはない。世界は、大地の上に安らいつつ、大地をいっそう浮き立たせようとする。