2024.03.25 『鉄の胡蝶』68回目 その4

ところがそれは大失敗だった、
……放れ馬となった小島馬夫は私が方向修正にかかろうものならそこにヌッと入って、足を私は掬われるのは火を見るより明らかで私は小島先生にひとりでしゃべっていてもらうしかなかったんだが、
失敗、失敗と十何年言いつづけてきて、こうして時が経過すると、失敗でも成功でもなく、あれはあれでまさに小島信夫のつくり出した時間と空間であり、あれはあれでやっぱり唯一無二、小島信夫しかあのようなことはなしえなかったと言えるのではないか、
「先生!」と言って私は立ち上がる、「そこにいるおばさんがさっきから先生のひと言ひと言に大笑いしてるからって、この人に話の焦点を合わせてたらダメですよ、先生は今日は漫談だか落語だかしにここに来たわけじゃないんですから、もっとしっかりしてくださいよ!