『猫と』(河出文庫)に、エッセイ「季節の中の猫」が掲載されました

河出文庫『猫と』ねこのエッセイアンソロジーに、「季節の中の猫」が載ってます。 これは『猫の散歩道』にも入ってますが、私が書いた猫文章のベストかも。事後で書いてるのに、どうなるのか、先が読めない。 書き出しは完全に小説、というか、これは全体としてほぼ短篇小説。
毎日うちの玄関先に置いたミルクを飲みに来ていた薄茶に縞柄が入った猫のお腹が膨らんできたんじゃないかと気がついたのが七月のことで、八月になると、「もうこれは完全に妊娠だ」と誰が見てもわかるようになった。 彼女はものすごく警戒心の強い猫で、捕まえて避妊手術をするとなると簡単ではないが、簡単だったとしてもお腹が大きくなったらもう手遅れで、人間の私たちは、 あんなに細い体で出産・子育てがちゃんとできるんだろうかと心配する気持ちの方が強くなって、避妊するしないはとりあえず後回しになった。