「私たちの知は世界に対していつも限界を抱えているからこそ世界は実在するものである」 この考え方を批判的実在論というのだそうだ。 『通天閣』を書いた酒井隆史さんの新刊『ブルシット・ジョブの謎』の欄外の注(p.85)で見つけた一節。
「人間は世界のすべてを説明できるわけではない(言葉には限界がある)」 という考えは、哲学の本に書いてありそうで書いてない。 哲学は言葉による思索の可能性の大きさを言外の前提として書かれている気がする。そこに私は生きている感触との齟齬を感じていた。
私は、説明できないことに惹きつけられる。 私の話に答えや結論はないけれど、考えるために必要なことは答えや結論には書かれていない、ということは理解されると思う。 必要なものは、考えるという行為を続けるための意志と素材。