古川日出男『女たち三百人の裏切りの書』が文庫になり、巻末に、この本が野間文芸新人賞を受賞したときの私との対談が解説として再録されています。 古川日出男と保坂和志という組合せは意外に思う人も多いでしょうが、選考会で一番推したのは私でした。
今回、文庫化に際して解説を依頼されたのですが、あのときの対談を読み返してみて、「これ以上の解説は書けない」と思ったわけです。 これは受賞記念の対談で、受賞記念というと、とかく世俗な話題に流れがちですが(作家としての苦労話とか、受賞の喜びとか……)、私は誰と話すときもそういうところに関心なく、そのとき最も本質と思っていることしか話せない。この対談は、中でも特別、密度が高い☄️
それはとりも直さず、この本の力です。
いい小説は、読者を置き去りにするのはもちろん、作者までも置き去りにする。