2023.5.25【京都トークの報告】湯浅湾『望まない』

トーク中に途中まで読み上げた湯浅湾の『望まない』(湯浅学作詞)の全文、掲載します。

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猿や熊は望まない/知らないところへいきなりつれていかれるのを/寝床を夜中に爆破されるのを

牛や馬は望まない/お尻にふいに注射打たれるのを/食事中メシを横取りされるのを

イカやタコは望まない/テレビに出て気のきいたコメントをするのを/無闇やたらに励まされるのを

蜘蛛や蟻は望まない/心あたりのない愚弄をされるのを/赤の他人から習慣をとがめられるのを

犬や猫は望まない/いらないものは捨てろと命令されるのを/だまって知らない団体に加入させられるのを

カニやウニは望まない/嫌いなやつのいうことをきくのを/まぬけで傲慢なやつの尻をぬぐうのを

山羊や豚は望まない/行きたくないところへ行かされるのを/行きたいところへ行けなくされるのを

岩や水は望まない/人やおばけとくらべられるのを/歌いたくない歌を歌わされるのを

花や苗は望まない/のびている途中で刈り取られることを/実りのない種を胚胎させられることを

幻や陽炎は望まない/くだらない現身(うつせみ)をあてがわれるのを/ないものをあることにされてしまうのを

麦や大豆は望まない/スカした野郎の能書きをくどくどきかされるのを/イイ顔のおやじからカップ酒と缶ビールを取り上げることを

畳や襖は望まない/ごはん一膳をくちゃくちゃ1万回噛んで喰うことを/それが国民の義務に定められることを

こんにゃくやちくわは望まない/高学歴の先生のもっともな話だけを信じるのを/信じないと地獄ヘ落ちてしまう教義を支えに生きることを

ニンニクやニラは望まない/ただひたすら現実的でしかいられないことを/わからないことやものを頭ごなしにしりぞけることを

あさりや蛤は望まない/床のない家にじゅうだんしきつめるのを/段ボールハウスを強制撤去することを

ウミウシやアメフラシは望まない/うすらとんかちの大失敗でできた穴でゆであげられることを/うさぎのフン一粒一粒に自分の名前を書かされることを

くぎやねじは望まない/お金の話だけしかしない夕飯にさそわれるのを/臭いで喉の奥がふさがってしまう風を吸い込むことを

梨や桃は望まない/道をたずねてきた人に未公開株をすすめることを/抹香鯨の背中にピースマークを刻みつけることを

蛭(ひる)や百足(むかで)は望まない/国境警備隊員にゆるキャラ=ケービイくんをプレゼントすることを/正しいことだけが正しいと闇雲に主張しつづけることを

ひげやわき毛は望まない/寝ている子供を見知らぬ山奥に捨てにいくことを/あらゆる猫の首を刎ねてよろこびあうことを

あわびやサザエは望まない/100 万人が嘘だといったらそれは嘘なのだと決めつけることを/三日三晩寝ずに1万人で輪になってマイムマイムを踊りつづけることを

インクや墨汁は望まない/オレオレ詐欺の創始者から届いた不幸の手紙に従うことを/河童に会ったことがあるという人をケダモノあつかいすることを

梅干や沢庵は望まない/みえすいたズルでも善人にバレなければ正義だと信じることを/ミミズより人間のほうが高等だと思い込むことを

布団や腹巻きは望まない/密林の奥でターザンに住民登録を強要することを/迷子の人間の子に子にはぐれた母猿を紹介して手数料をその子に請求すること を

オランウータンやアリクイは望まない/見たこともない人に突然なぶり殺されることを/どこもかしこも同じ建物でうめつくすことを

しいたけやこんぶは望まない/縁もゆかりもない土地を焼き尽くすことを/知らない金持ちに自分の町全部が更地にされることを

カモやネギは望まない/おたんこなすにあれこれ指図されることを/恥を知らずにプライドだけ高く持つことを

人魂や魑魅魍魎は望まない/見るもおぞましいおろかものがエラい人でいることを/口に出すのもけがらわしいばかどもが勝手にきまりを作って俺たちに押しつけることを